変革を「仕組み」に変える――
みずほ信託銀行の
コンサルティングの進化を
支えた挑戦

OB INTERVIEW 03

会計ビッグバンという激動期に誕生した財務コンサルティングは、いかにしてコンサルティング部を支える柱へ成長したのか。個人の「技」を統合し、完遂へと導く「エンジニアリング」へ昇華させた組織のチャレンジ。コンサルティング部門のOBと現役世代の対話を通し、正解のない問いに挑み続けるみずほ信託のコンサルティングの真髄を探っていく。

PROFILE

秋山 和之

平成ビルディング株式会社
取締役 社長

秋山 和之

1989年、安田信託銀行㈱に入社。みずほ信託銀行(株)コンサルティング部長、同 執行役員信託総合営業第七部長、同 常務執行役員(コンサルティング本部長 兼 営業部店担当役員)、同 副社長執行役員を経て現職。

  • 大島 佑介

    コンサルティング部

    大島 佑介

  • 行司 早織

    コンサルティング部

    行司 早織

  • 高田 将平

    コンサルティング部

    高田 将平

変革は、顧客の切実な悩みから生まれる──
財務コンサルティングという「第2の柱」の誕生

高田 先達が築いた事業承継コンサルティングという盤石な基盤がある中で、秋山さんは新たに大企業向けの財務コンサルティングという柱を打ち立てられました。当時の使命感、思いについてお聞かせください。

秋山 私がコンサルティング部に入った当初から、部内には「財務的視点を取り入れた提案」への想いは既にありました。当時は旧安田信託以来の強みである事業承継が軸で、私も当初はその領域に一貫して取り組んでいました。

ところが、事業承継は対象がオーナー企業に限られるという制約もあり、大企業にはなかなか刺さらない。当時のコンサルティング部は、「強みはあるが、時代と顧客層の変化に十分に応えきれていない」状態だったのです。

行司 突破口の見えない状況下で財務コンサルティングが新たな武器となる転換点があったのでしょうか。

秋山 ある大手企業の財務担当役員から受けた相談がきっかけでした。当時は会計ビッグバンが迫り、連結決算への移行が現実味を帯びてきた頃です。連結の外に子会社が数多くあり、その法人もホテル運営子会社の深刻な債務超過に陥っていました。「連結に移行したらどうなるのか」「どう処理すべきか」という切実な悩みに対し、公認会計士試験用のテキストから基礎を学び、独学で連結決算の理解を深めました。

当時は会計制度の見直しが進み、資産評価や再編の考え方にも変化が生じていました。そうした環境の中で、長年保有してきた不動産といった資産の持つ価値を、どのように経営課題の解決に結びつけられるかを考えました。結果として、不動産を活用した再編の枠組みを通じて、お客さまの抱えていた課題に応える提案ができ、非常に喜んでいただけたのです

大島 その成功体験から、いかにして「コンサルティング部の第2の柱」を確立していったのでしょうか?

秋山 ちょうどその頃、国際会計基準の導入が現実味を帯び、企業を取り巻く会計環境は大きな転換期を迎えていました。連結決算への移行や年金会計の導入などを背景に、多くの企業がこれまで表に出てこなかった課題と向き合う必要に迫られていたのです。

そうした状況の中で、長年にわたり保有してきた不動産や株式といった資産の価値を、どのように経営の安定や再建に結びつけていくかは、多くの企業に共通する重要なテーマでした。会計制度の変化を踏まえながら、その活用の道筋を描いていくことが、当時の企業再建において大きな鍵を握っていたのだと思います。

このコンサルティング領域に、限られた人員を充てていただいた川久保部長の決断も大きな後押しとなりました。

その後の組織再編税制の整備も追い風となり、選択肢や手法の幅が広がったことで、財務コンサルティングの役割はさらに重要性を増していきました

振り返ると、最初から戦略があったわけではありません。顧客の悩みを起点に答えを突き詰めた結果、「あいつに聞けば解決できる」と信頼が広がった。ただ、この経験を通じ「一人でできることの限界」も強く意識しました。専門性をどう束ね、プロジェクトとして完遂するか。それが次の課題になっていくのです。

「法個一体」を現実にする力──
エンジニアリングが拓いたみずほ信託のコンサルティング

行司 現在の〈みずほ〉が誕生する過程で、みずほ信託銀行が単体としてではなく、グループとして顧客に向き合うことが現実的なテーマになっていった時期だったと思います。その状況下で、コンサルティング部はグループビジネスの起点として、どのような役割を果たしていったのでしょうか。

秋山 〈みずほ〉の誕生は、私たちみずほ信託銀行の景色を劇的に変えました。それまで単体では難しかったナショナルクライアントに対し、グループ連携を通じて一気に窓口が開いたのです。私たちはRM向けに勉強会を重ね、みずほ信託銀行が持つコンサルティング機能が「顧客の役に立つ武器」であることを伝え続けました。その結果、私たちが起点となって銀行・証券の案件を創出する好循環が生まれたのです。

大きかったのは、グループ内のRMや役員の中に、本質を嗅ぎ分けてくれる人たちがいたことです。みずほ信託のコンサルティングの強みを理解してくれるパートナーがグループ内に増えたことが、起点としての力を強めていきました

大島 事業承継はオーナー個人への深い入り込み、財務コンサルは法人へのアプローチです。この「法個一体」のアプローチを具体化する力とは、どのようなものだとお考えですか。

秋山 法個を別物と捉える向きもありますが、私は最初から一体のものだと思っていました。法人という公の世界と、個人という私的な領域。その交差点にあるのが株式です。株式を軸に双方の課題を立体的に解決する。これは、みずほ信託銀行だからこそ取り組めるスタイルだと考えています。

ただ、こうした複雑なテーマは一人で完結しません。会計、税務、法務、プロダクト──あらゆる専門家を束ねる「エンジニアリング力」が不可欠です。それは案件を単に持ってくるだけでなく、どう料理するかを目利きし、最適な形に組み上げて完遂していく力です。みずほ信託銀行は、より長い視点で企業やファミリーの安定を支えられる。つまり、番頭のような役割を担える存在なのです。

高田 秋山さんが思い描いていたコンサル営業の「一歩先」の形についてお聞かせください。

秋山 私がコンサルティング部に来たときに思っていたのは、「コンサルタントは優秀なRMであるべきだ」ということでした。理想を言えば、両者の境目がなくなることが一つのゴールかもしれません。

しかし、専門性の深さを求めれば、人生の大半をそこに投じることになります。一方で顧客との日々の接点も守り続ける。この両立は過酷です。ですから、まずはRMがニーズを「持ち込む力」を最大化することが第1フェーズです。コンサルティング部がそのニーズを受け取り、エンジニアリングとして解決のシナリオを描く。この連携の面積を広げていくことが重要です。

その先にはさらに進化した、個人の能力だけに頼らない「仕組み」の姿があるはずです。フロントがすべての能力を持っていなくても、テクノロジーの支援で解決の形が見えてくる。そうした「加工力の自動化・共有化」が進む時代が、数歩先には来るのではないかと考えています。

情熱を仕組みでつなぎ、未来を創る。次代に手渡したいもの

大島 秋山さんが部長の時代、組織は「One Mizuho」の旗印の下で急拡大していきました。みずほ信託のコンサルティングのDNAを継承するためにどのような手を打たれたのでしょうか。

秋山 当時、経営からは「コンサルティング部100人構想」が打ち出されました。グループの膨大な顧客接点に対しユニバーサルに相談に乗り、必ず対応できる体制をつくる。組織としてそこへ舵を切った時期でした。ただ、数を増やせば機能が高まるわけではありません。守るべき中核が壊れてしまうのではないかという危うさを常に感じていました。

それまでは、一対一の徒弟制です。師匠が付きっきりで教えるスタイルですが、それでは100人規模の育成には到底追いつかない。そこで考えたのが、一門制という仕組みです。リーダーの下に数人のメンバーを置き、単に上下でつなぐのではなく、「兄貴分が弟分をサポートする」という兄弟のような横の関係を意識しました。兄から学ぶことで、兄自身も教える力を身につける。教えることで学ぶ構造によって、育成の質を高めようとしたのです。

あわせて、共通の軸を言語化するためにコンサルティングガイドブックを当時のメンバーで作成しました。みずほ信託のコンサルティングとは何か、そのDNAを明文化した共通言語を用意したかったのです。一体感とは、同じ格好をすることではなく、仕事への誇りを共有し、後輩に伝える姿勢そのものにある。仕組みで文化を守る、それが当時の私の答えでした。

大島 育成やナレッジ共有について、将来的にはどのような姿を目指すべきだとお考えでしょうか。

秋山 当時は、コンサルティング部のメンバーが持つ「秘伝のたれ」を、いかにナレッジとして組織の資産に変えられるかの分岐点でした。理想は、成果物を見て「もう一段、顧客の気づきを引き出せるのではないか」と問いかけられる力量を、教える側が持つことです。今はAIをはじめとする技術が進歩しています。将来的には、過去事例をもとに「この課題なら、この専門家とプロダクトを組み合わせるべきだ」という勘所を、AIが示す世界が来るでしょう。しかし、その前提として、人が試行錯誤して積み重ねてきた思考や判断が言語化されていなければ、AIも学びようがありません。

コンサルティングは、人の悩みを起点にどう組み立てれば前に進むかを考え続ける仕事です。その思考プロセスを、仕組みや技術、次世代へと託していくこと。それが、この仕事を次代に手渡していくということなのです。

高田 では最後に、次世代を担う〈みずほ〉社員へ向けてメッセージをお願いします。

秋山 現役の皆さんに伝えたいことは三つあります。一つめは、自分の強みを徹底的に磨き、それを外に開いてつながることです。知識を知識のままで終わらせない。打席に立って、失敗も含めて経験値に変えてください。そして、磨いた強みは抱え込まずにオープンに発信する。強みを持った人同士が支え合うネットワークこそが、これからの時代の武器になります。

二つめは、すべては顧客ニーズが起点である、ということです。対話を続けてもらえるかどうかは、「この人は役に立つ」と思ってもらえるかにかかっています。そのために必要なのが、聞く力であり質問の力です。質問を重ねて、一つでも多くの宿題をもらい、次につなげる。顧客の困りごとを引き出す素材を必死に準備し、質問の技を磨いてください

三つめは、過去を超える気概を持つことです。温故知新は大切ですが、過去を守るだけでは組織は前に進みません。時には壊す覚悟で考え、本当に大切なものだけを残して次につなげていく。その勇気を持ってほしい。守りに入れば、それは退化です。軸足は常に顧客に置き、攻め続ける。その連動の中にこそ、新しい価値が生まれ、次の時代を切り拓く力が宿る――私はそう信じています。