信じて託す原点が、
次の100年を切り拓く。
継承と革新が生み出す
コンサルティングの真価

OB INTERVIEW 01

激動の100年を越え、みずほ信託銀行が守り抜いてきたのは「答えは常に顧客が持っている」という信念だ。技術が陳腐化する時代において、真に問われるのは創意工夫を絶やさない「人と組織の力」に他ならない。ここではコンサルティング部門のOBと現役世代の対話を通し、次の100年を創り出す変革の意志を探っていく。

PROFILE

川久保 公司

株式会社JPMC
社外取締役 取締役会議長

川久保 公司

1980年、安田信託銀行(株)に入社。みずほ信託銀行(株)コンサルティング部長、同 コーポレートビジネス企画部長、同 執行役員を歴任。(株)みずほ銀行 執行役員 総合コンサルティング部長、同 常務執行役員、みずほ信不動産販売(株)(現 みずほ不動産販売(株))取締役社長、東京建物(株)常勤監査役を経て現職。

  • 村上 あずさ

    コンサルティング部

    村上 あずさ

  • 豊田 貴登

    コンサルティング部

    豊田 貴登

答えは、いつも顧客が持っている──
みずほ信託のコンサルティングの原点と未来

村上 みずほ信託銀行の100周年という節目を迎えるにあたり、私たちが受け継ぐべき「みずほ信託のコンサルティングの原点」について、改めてお聞かせいただけますでしょうか。

川久保 大正14年の創業から続く100年の歴史を振り返ると、その最後の25年は〈みずほ〉としての歩みでした。この四半世紀は単なる統合後の期間ではなく、私たちが自らの立ち位置と価値を明確にし、アイデンティティを確立してきた時間だったと考えています。

私たちは信託という専門領域において、単なるグループの一部署に留まるのではなく、常に独立独歩の姿勢を貫いてきました。グループの競争力を支える「強みの源泉」であるという自負こそが、私たちの歩みを支える根幹となっています。

その原点は、常に「顧客ニーズ」という一点に集約されます。象徴的なのが、後にコンサルティング部創設の思想的な起点ともなった、安田信託銀行・証券部時代の取り組みです。当時、メインバンクではない立場から私募債の受託を得ることは極めて困難でした。しかし、ある優良企業のオーナーとの対話の中から、事業承継や資本構成の整理といった切実な悩みが浮き彫りになりました。

その課題に真摯に応えて信頼を深めていった結果、私募債の受託にとどまらず、自社株の承継や一族の資産設計までをトータルに担うコンサルティングへと発展していったのです。

コンサルティングとは、あらかじめ用意されたメニューを並べることではありません。顧客との対話を起点に、ともに課題を見つけ、形にしていく。この誠実な姿勢こそが、時代が変わっても揺らぐことのない私たちの原点です。

村上 そのスピリットを、どのように組織として継承されてきたのでしょうか。

川久保 私たちの強みは、この仕事を切り拓いてきた先達の「熱量」を特定の個人にとどめず、組織全体の自信や誇りとして共有してきた点にあります。原動力は、やはり顧客からの評価でした。目の前のお客さまの課題に真正面から向き合い、信頼が信頼を呼ぶ——そのプロセスそのものに、私たちはやりがいと誇りを見出してきたのです。

こちらからお願いしたわけでもないのに、お客さまがわざわざ本店まで足を運び、社長に直接、感謝や評価の言葉を伝えてくださる。そうした報せが耳に入るたび、「自分たちの仕事は、素晴らしいお客さまたちのお役に立っている」という実感が、組織に広がっていきました。個人の喜びや感動が組織へと共有されることで、組織の喜びと誇りが育まれ、それがまた次の挑戦に向かわせる。こうした循環があったからこそ、担い手が入れ替わっても熱量は失われず、文化として受け継がれていったのです。

そして、そうしたお客さまの評価の重みを、経営層がきちんと理解してくれていたのです。もともと信託の価値をよく知る役員だけでなく、信託出身ではない立場の役員にも、「顧客からの信頼こそがコンサルティング部の価値だ」という認識が共有されていった。その理解と共感が、「あの部が一生懸命やっているなら応援しよう」という後押しにつながったのだと考えています。

現場の情熱と、それを信じて支える経営。この幸福な関係性があったからこそ、属人的ではない、組織としての持続的な強さが育ったのです。

豊田 グループの統合を目の当たりにしてこられた川久保さんは、現在のコンサルティング部門のポテンシャルをどう見ていますか。

川久保 〈みずほ〉の発足により、顧客接点は飛躍的に拡大しました。これは単なる規模の拡大ではなく、より多様で質の高い課題に触れる機会が増えたことを意味します。

広大な顧客基盤から寄せられる相談に対し、的確な解を提示し続けることで、〈みずほ〉への信頼はより強固なものとなり、それがまた人を育て、組織の自信へと還元されていく好循環を生んでいます。現在、コンサルティング機能が一段と強化されていますが、忘れてはならないのは、金融スキームや法律知識はあくまで手段であるということです。

迷ったときは、いつも答えを教えてくれる顧客との対話に立ち返ってください。〈みずほ〉には、筋の通った志があれば、組織を挙げて後押しするリソースと懐の深さがあります。後輩たちには、この揺るぎない原点を胸に、思う存分新しい価値を創造してほしいと願っています。

評価が文化になるとき──
コンサルティング部を支えた“信頼の土壌”

村上 金融危機の混乱について、川久保さんがよく言及されていることを聞いています。当時、コンサルティング部はどのような状況に置かれていたのでしょうか。

川久保 日本の金融システム全体が大きく揺らいでいた時代でした。1990年代後半、バブル崩壊後の不良債権問題が深刻化し、山一證券や北海道拓殖銀行といった大手金融機関の破綻が相次ぐなど、金融不安が頂点に達していました。私たちの現場も例外ではなく、通常業務が回らなくなるほどの混乱に見舞われました。あらゆる部門から人が支店への支援に回り、そのまま現場に残ることも珍しくありませんでした。

私たちの役割は、目先の収益を積み上げることではなく、お客さまの事業や資産、その先にある未来の課題を考え続けることにあります。混乱のさなかにあっても、そうした視点の重要性は現場でも共有されていました。

結果として、危機が落ち着いたあとには、多くのメンバーが再び本部に戻り、顧客との対話を起点とした取り組みを継続することができました。事業環境がどれだけ厳しくなっても、「顧客の未来を考え続ける機能だけは失ってはいけない」という意識が、当時の現場と経営のあいだに育っていたのだと思います。

単なる収益活動ではなく、課題解決に真正面から向き合い続けてきた。その積み重ねがあったからこそ、経営層からも、そしてお客さまからも、コンサルティングの意義を改めて認識してもらえたのではないでしょうか。

〈みずほ〉発足後も、異なる背景を持つ三行出身のリーダーたちが、私たちの実像を深く吟味し、その有用性を高く評価しました。単なる自賛ではなく、客観的な視点を持つ意思決定層がコンサルティングの真価を認め、組織的な後ろ盾となったのです。この「信頼の土壌」があったからこそ、私たちの機能はグループ戦略で欠かせない役割を担うようになったのだと思います。

豊田 時代の変化の中で、コンサルティングの真価はどこに宿るとお考えですか。

川久保 優れたスキームも、情報化社会においては瞬く間に陳腐化します。最後に残るのは、スキームそのものではなく、それを生み出し磨き続ける「人と組織の力」です。

大切なのは、組織として知恵を編み出す「術(すべ)」をどれだけ身につけているか。たとえば、一流は「24色の色鉛筆」を上手に使いこなしますが、超一流は「12色の絵の具」しかなくとも、自らの工夫で無限の色を作り出します。既成のツールを並べるのではなく、限られたリソースから創意工夫で最適解を導き出す。この姿勢こそがコンサルティングの真髄です。

村上 これまでお話を伺って自分に寄せて考えてみると、必ずしもベストな提案に落とし込みきれない局面もあったように感じます。そうしたとき、川久保さんはどんな姿勢や向き合い方を大切にしてこられたのでしょうか。

川久保 提案が難しい場面こそ、コンサルタントとしての真価が問われます。私たちが向き合うお客さまは、多くの場合、自分たちよりはるかに人生経験が豊富で、長い時間をかけて事業や資産を築いてこられた方々です。大切なのは、その歩みや努力をきちんと感じ取り、深い敬意をもって向き合う姿勢だと思っています。

かつての先達は、自分より知識のあるお客さまに対して、その取り組みを心から讃えることで、提案以上の信頼を築きました。評価や敬意そのものが、重要な価値の提供になる。それを体現してきたのが、みずほ信託のコンサルティングの現場だったのです。

信託という武器を手に、次の100年へ

豊田 信託という「武器」を制度や機能の面から見たとき、これからの時代にどう活かしていくべきでしょうか。

川久保 信託のソリューションとは、単なる複雑な金融スキームを指すのではありません。信託という制度・プロダクトを軸に、グループが持つ銀行や証券などの全機能を掛け合わせることで、初めて真の価値が生まれます。例えば、かつての超大型買収案件では、信託スキームを活用することで、〈みずほ〉は自己資本比率を低下させることなく、巨額の資金提供を実現しました。これは銀行単体では成し得なかった、信託を活かした戦略的な資本活用の一例です。プロダクトを深く学ぶことは、そのまま実践的な武器を磨くことに直結します。

また、私たちは「トラスト(信頼)」を冠する仕事の重みを再認識すべきです。受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たすことは、単なる資産管理ではなく、顧客の信頼を守り抜くという崇高な思想です。この精神は今や国内に留まりません。グローバル化が進む中、国際的な文脈で信託を捉え直し、世界から信頼される存在であり続けることが求められています。

村上 これからの信託ビジネスが切り拓くべき、新たなフロンティアについてお聞かせください。

川久保 テクノロジーの進化に伴い、知的財産権や無形資産、さらには暗号資産といった新しい「権利」が次々に生まれています。これらはすべて信託の対象になり得るものです。〈みずほ〉には、宇宙開発や最先端の工学領域でも活躍できるような卓越した頭脳を持つ人材まで揃っています。「これは我々の仕事ではない」と線を引いた瞬間に成長は止まります。未知のリスクを恐れて後回しにするのではなく、新しい領域へ自ら踏み込み、フロンティアを切り拓いていく攻めの姿勢を持ってください。

安田信託時代に芽生え、コンサルティング部として形を成してから約50年――。私たちは、このコンサルティングという無形資産を磨き上げてきました。他行が容易に真似できないこの圧倒的なアドバンテージを糧に、100年、200年と時を重ねることで、真の「格」を備えたブランドへと昇華させてほしいと願っています。

村上 本日は、コンサルティングの原点から未来の可能性に至るまで、貴重なお話を伺うことができました。最後に、これからの〈みずほ〉を担う後進の社員へ向けて、進むべき道を照らすメッセージをいただけますでしょうか。

川久保 仕事において最も大切なことは、いつの時代も極めてシンプルです。 それは「自分の仕事に忠実であること」に尽きます。たとえ時代が変わり、AIが進化しても、人と人が向き合う以上、「誠実さ」や「感動」という価値観は金やダイヤモンドのように不変の輝きを放ちます

そして、私が何度でも強調したいのが、「お客さま起点で考える」というコンサルティングの原点です。これから先、お客さまのニーズはますます多様化し、複雑になっていくでしょう。課題が最初から整理された形で持ち込まれるとは限りません。そうしたときに、「これを、みずほの力でどうにかできませんか?」という最初の声を受け止めるのが、フロントの営業担当であり、そしてコンサルティング部なのです。

コンサルタントとして自分なりの得意分野や定番の提案パターンを持つことは、決して悪いことではありません。けれど、それだけでは足りない。お客さまが本当に困っていることは何か、まだ言語化されていない悩みはどこにあるのか。そこに真摯に向き合い、対話を重ねながら、ともに答えを探していく。その姿勢こそが、みずほ信託のコンサルティングの原点だと思います。

プロフェッショナルとして、常に自分に高い基準を課してください。プレゼンがうまくいった、タスクを終えた。そこで満足せず、「もっとやれたことはないか」と自分をアップデートし続ける努力が、数年後に決定的な差となります。

皆さんは今、世界の金融トップリーグ、G-SIFIsというフィールドで仕事をしています。お客さまの悩みに真摯に向き合い、そこから発想を広げていく。この原点を忘れず、世界という大きなピッチで、誇りを持って戦い抜いてください。この舞台に立てていることに誇りを持ってほしいし、同時に、日々支えてくれている仲間や家族への感謝も忘れないでほしい。そうした姿勢が、次の挑戦を後押しする文化として受け継がれていくのだと思います。皆さんがみずほ信託銀行の次の100年を創り、顧客とともに感動を分かち合える素晴らしいキャリアを歩むことを、心から期待しています。

西田 明男氏と梶野 富宏氏 西田 明男氏と梶野 富宏氏