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みずほ信託銀行
企業戦略開発部

赤名 優介

コンサルティング部
広瀬 祐介
大橋 香理菜

企業のサステナブルな発展を支えるために
未来を照らすファミリービジネス・マネジメント

「日本を支える経営組織」と言われるファミリービジネスがサステナブルな経営を続けていくため、みずほ信託銀行はファミリービジネスを支援している。ファミリービジネスが事業や技術をスムーズに承継するためには、コーポレートガバナンスやパーパス、ビジョンまで含めた支援が求められる。事業や資産だけではなく、「想い」もしっかりとつないでいくために。ファミリービジネス・マネジメントを支援するメンバーが、お客さまや社会にもたらす価値や、想いに寄り添った支援を語る。

左から:広瀬・大橋・赤名

日本経済を支えるファミリービジネスで
今、問われるガバナンスの課題とは

――ファミリービジネスは「日本を支える経営組織」と言われます。その強みはどこにあるでしょうか。また、どのような課題を抱えているのでしょうか。

赤名:「特定の家族や親族が大きな影響力を持って経営する企業」がファミリービジネスの定義で、同族企業やオーナー企業とも呼ばれます。日本の全法人の約97%、上場企業でも約43%*がファミリービジネスとされており、まさに「日本を支える経営組織」と言っていいでしょう。その強みは、迅速な意思決定と長期的視点による経営にあります。例えば、非上場の大手飲料メーカーでは、赤字事業に粘り強く取り組み、何十年もかけて黒字化しました。長期的視点に立ったファミリービジネス企業の強みが出た好例と言えます。

一方、固有の弱みもあります。迅速な意思決定という強みの裏返しになりますが、ファミリー内のガバナンスポリシーの制定やルールの明文化などを進めている企業はまだ多くはなく、ガバナンスが不透明になりがちです。また、長い年月に渡って結束を保ち続けることもファミリーに立ちはだかる課題です。中堅や中小企業に限らず、上場企業でも相続などのタイミングで対立や紛争が発生し、いわゆる「お家騒動」で企業価値を大きく毀損してしまうケースもあります。

広瀬:こうしたファミリービジネスの強みを活かし、弱みを克服するために、私たちみずほ信託銀行は「ファミリービジネス・マネジメント」というフレームワークを提案しています。これは、「ファミリー(個人)」と「企業」の両サイドをシームレスにマネジメントし、財務価値だけなく、非財務価値の向上も目指すものです。具体的な支援内容は後述しますが、「ファミリー(個人)」サイドではファミリーの結束を強めるために、「企業」サイドでは透明で公正な組織の運営を支援していきます。

大橋:私たちコンサルティング部はお客さまの永続的な発展に資するため、事業承継コンサルティング、上場企業・非上場企業への財務コンサルティングなどの業務を担っています。ファミリービジネスの支援では「資産を次代にどう承継するか」という論点が主流でしたが、近年は「創業家の想いや理念を伝えていきたい」というニーズが増えてきています。また、上場ファミリービジネス企業では、アクティビストがガバナンスの改善を主張するケースも見られるようになりました。このように、新たに浮かび上がってきた脆弱性への対応も課題です。理念をつなぎつつ、アクティビストに突かれがちなコーポレートガバナンスを強化していけるよう、包括的なアプローチを目指していく。それがファミリービジネス・マネジメントなのです。

* 上場企業を対象に「代表者(社長)」「会長」の苗字(もしくは氏名)が有価証券報告書(半期報告書含む)中の大株主情報に含まれるケースを「ファミリービジネス」と機械的に判別したもの。

左から:広瀬・大橋・赤名

日本経済を支えるファミリービジネスで
今、問われるガバナンスの課題とは

――ファミリービジネスは「日本を支える経営組織」と言われます。その強みはどこにあるでしょうか。また、どのような課題を抱えているのでしょうか。

赤名:「特定の家族や親族が大きな影響力を持って経営する企業」がファミリービジネスの定義で、同族企業やオーナー企業とも呼ばれます。日本の全法人の約97%、上場企業でも約43%*がファミリービジネスとされており、まさに「日本を支える経営組織」と言っていいでしょう。その強みは、迅速な意思決定と長期的視点による経営にあります。例えば、非上場の大手飲料メーカーでは、赤字事業に粘り強く取り組み、何十年もかけて黒字化しました。長期的視点に立ったファミリービジネス企業の強みが出た好例と言えます。

一方、固有の弱みもあります。迅速な意思決定という強みの裏返しになりますが、ファミリー内のガバナンスポリシーの制定やルールの明文化などを進めている企業はまだ多くはなく、ガバナンスが不透明になりがちです。また、長い年月に渡って結束を保ち続けることもファミリーに立ちはだかる課題です。中堅や中小企業に限らず、上場企業でも相続などのタイミングで対立や紛争が発生し、いわゆる「お家騒動」で企業価値を大きく毀損してしまうケースもあります。

広瀬:こうしたファミリービジネスの強みを活かし、弱みを克服するために、私たちみずほ信託銀行は「ファミリービジネス・マネジメント」というフレームワークを提案しています。これは、「ファミリー(個人)」と「企業」の両サイドをシームレスにマネジメントし、財務価値だけなく、非財務価値の向上も目指すものです。具体的な支援内容は後述しますが、「ファミリー(個人)」サイドではファミリーの結束を強めるために、「企業」サイドでは透明で公正な組織の運営を支援していきます。

大橋:私たちコンサルティング部はお客さまの永続的な発展に資するため、事業承継コンサルティング、上場企業・非上場企業への財務コンサルティングなどの業務を担っています。ファミリービジネスの支援では「資産を次代にどう承継するか」という論点が主流でしたが、近年は「創業家の想いや理念を伝えていきたい」というニーズが増えてきています。また、上場ファミリービジネス企業では、アクティビストがガバナンスの改善を主張するケースも見られるようになりました。このように、新たに浮かび上がってきた脆弱性への対応も課題です。理念をつなぎつつ、アクティビストに突かれがちなコーポレートガバナンスを強化していけるよう、包括的なアプローチを目指していく。それがファミリービジネス・マネジメントなのです。

* 上場企業を対象に「代表者(社長)」「会長」の苗字(もしくは氏名)が有価証券報告書(半期報告書含む)中の大株主情報に含まれるケースを「ファミリービジネス」と機械的に判別したもの。

赤名 優介

一族の想いや企業のパーパスをつなぐ
ファミリーと企業を両輪で支えるマネジメント

――相続対策の支援にとどまらず、ファミリービジネスを包括的に支援していくのですね。では、具体的な支援のかたちについて掘り下げてお聞かせください。

広瀬:ファミリービジネス・マネジメントは資産と株式や不動産などの財務的価値の継承にとどまらず、コーポレートガバナンスやファミリーガバナンスまで踏み込み、これまでのノウハウを生かしてコンサルティングを進めていきます。これにより、社会の信用や評価、人脈やナレッジといった、ファミリービジネスを支える非財務的価値の承継もカバーできます。

大橋が言及したように、ニーズの変容もあり、これまでのような事業や資産の承継について提案するだけでは、お客さまに寄り添い、サポートしていくことができません。お客さまはファミリーの想いや企業のパーパスをいかに承継していくかという課題に直面し、苦悩されています。今まで明文化されてこなかった想いはファミリー憲章や家訓、ファミリー史の作成によって体現し、企業のパーパスもあらためて掘り下げていく。これらのサポートにより、企業のサステナブルな成長に寄与したいと考えています。

大橋:ファミリービジネスは、ややもすると「同族経営」として不透明な印象を持たれることもありますし、上場企業では少数株主への対応が必須です。ガバナンスの向上に努め、ファミリーで経営を続ける上での正当性を担保するためにサクセッションプランを作成するなど、ファミリービジネスならではの課題を解決するための支援が欠かせません。上場企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化していますし、非上場企業においても、時代の変化に伴って家族のあり方も変化し、後継者難など多くの問題に直面しています。ファミリービジネスの課題や悩みはファミリーでそれぞれ異なり、一筋縄では解決することが困難です。みずほ信託銀行はお客さまの目線に立ち、共に悩み、考え抜くことを大切にしてきました。ファミリービジネス・マネジメントの支援は、企業やファミリーのサステナブルな発展に資するもの。引いては、社会の発展に貢献するものです。

赤名:そう、まさにファミリービジネスの支援は紋切り型で対応できるものではなく、オーダーメイド以外に選択肢はありません。企業戦略開発部、コンサルティング部の先輩たちは「事業承継」という言葉が今ほど一般的でない時代から、業界でも先駆けて継承の課題に向き合い、40年に渡って事業や株式の承継をサポートしてきました。私たちの組織には法務、税務をはじめとしたさまざまな知見やノウハウが蓄積されていますし、お客さまに寄り添う支援がDNAとして受け継がれています。

赤名 優介

一族の想いや企業のパーパスをつなぐ
ファミリーと企業を両輪で支えるマネジメント

――相続対策の支援にとどまらず、ファミリービジネスを包括的に支援していくのですね。では、具体的な支援のかたちについて掘り下げてお聞かせください。

広瀬:ファミリービジネス・マネジメントは資産と株式や不動産などの財務的価値の継承にとどまらず、コーポレートガバナンスやファミリーガバナンスまで踏み込み、これまでのノウハウを生かしてコンサルティングを進めていきます。これにより、社会の信用や評価、人脈やナレッジといった、ファミリービジネスを支える非財務的価値の承継もカバーできます。

大橋が言及したように、ニーズの変容もあり、これまでのような事業や資産の承継について提案するだけでは、お客さまに寄り添い、サポートしていくことができません。お客さまはファミリーの想いや企業のパーパスをいかに承継していくかという課題に直面し、苦悩されています。今まで明文化されてこなかった想いはファミリー憲章や家訓、ファミリー史の作成によって体現し、企業のパーパスもあらためて掘り下げていく。これらのサポートにより、企業のサステナブルな成長に寄与したいと考えています。

  • 資料P17

大橋:ファミリービジネスは、ややもすると「同族経営」として不透明な印象を持たれることもありますし、上場企業では少数株主への対応が必須です。ガバナンスの向上に努め、ファミリーで経営を続ける上での正当性を担保するためにサクセッションプランを作成するなど、ファミリービジネスならではの課題を解決するための支援が欠かせません。上場企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化していますし、非上場企業においても、時代の変化に伴って家族のあり方も変化し、後継者難など多くの問題に直面しています。ファミリービジネスの課題や悩みはファミリーでそれぞれ異なり、一筋縄では解決することが困難です。みずほ信託銀行はお客さまの目線に立ち、共に悩み、考え抜くことを大切にしてきました。ファミリービジネス・マネジメントの支援は、企業やファミリーのサステナブルな発展に資するもの。引いては、社会の発展に貢献するものです。

赤名:そう、まさにファミリービジネスの支援は紋切り型で対応できるものではなく、オーダーメイド以外に選択肢はありません。企業戦略開発部、コンサルティング部の先輩たちは「事業承継」という言葉が今ほど一般的でない時代から、業界でも先駆けて継承の課題に向き合い、40年に渡って事業や株式の承継をサポートしてきました。私たちの組織には法務、税務をはじめとしたさまざまな知見やノウハウが蓄積されていますし、お客さまに寄り添う支援がDNAとして受け継がれています。

左から:広瀬・大橋・赤名

企業とともに挑み、ともに実る
前例のない支援で力を発揮するために

――ファミリービジネス・マネジメントのケーススタディを掘り下げてお聞きします。みなさんが尽力してきた支援事例をお聞かせください。

大橋:非上場企業の2代目オーナーのケースです。一族のメンバーが増えていく中で、創業者の価値観や想いをどう伝えていくかを悩まれていました。そこで、私たちは、ファミリーの土台となる価値観や理念、あるべき姿を示した「家訓」や、円滑な株式承継に向けた「株式承継ルール」の策定を支援しました。私はオーナーの生い立ちから経営、資産の受け継ぎ方にフォーカスし、合計で30時間以上のインタビューを重ねています。こうして、経営の中で悩んだり、迷ったりした際に「戻るべき拠りどころ」になる家訓を定めることができました。株式を承継するルール、つまり資産を承継する仕組みもつくり、アセットプランニングの面からもファミリーの永続的な発展に貢献できています。インタビューを通してオーナー個人の投資への考え方や、不動産の取得意向も伺うことができ、信託銀行としてさらなる支援も視野に入っています。

広瀬:創業から約 80年が経った企業のケースです。社長は創業者から数えて第三世代(孫)となり、親族のつながりや創業の理念が薄まることを懸念していました。親子の阿吽の呼吸で関係が維持できた前世代とは異なる、第3世代ならではの悩みです。ヒアリングを通して印象に残ったのは「これだけ企業を成長させてきた創業家の強み、理念とは何か。自分は受け継いでいる自信がなく、体現も継承も難しい」ということばです。私たちは、解決策として「家訓の制定」と「ファミリー会議の立ち上げ」を支援しました。次の世代に、ことばの重みと温度感を持って、しっかりと伝承していく。これがオーナーの想いに応える解決策になったのです。ファミリー会議は一族の一体感を確認し、ガバナンスを維持する仕組みとして定期的に開催。その運営やファシリテートを支援しています。

赤名:上場企業の事例です。経営の一線から退いたオーナーは株式を経営に関与しない家族へ承継するにあたって、自らの真意が伝えきれていないと感じていました。株式は持続的に配当収入を生み出し、企業の経営方針を左右する資産です。しかし、創業の想いを汲まない継承者がいた場合、無為に浪費されてしまったり、企業の成長戦略に沿わない議決権行使がされてしまったりする恐れもあるでしょう。そこで、オーナーや企業がどのような沿革を歩み、社会にどのような価値を生み出してきたのか、事業や株式に対してのスタンスなど、あらためて理念や価値観を取りまとめました。オーナーが事業や資産を形成す中では確固たる理念が築かれていますし、そこから導かれるビジョンは次世代の指針になるものです。ファミリーが株式に向き合う姿勢が明確になれば、企業の成長戦略にも、ファミリーの充実した人生にもポジティブな影響を与えるでしょう。コンサルティング部・企業戦略開発部が蓄積した事業承継のノウハウに加え、人脈や知的ノウハウといった非財務面もカバーした提案により、的確な支援ができました。

――ファミリービジネス・マネジメントの手厚い支援の一端が分かりました。携わるメンバーとして、どのような考えで業務にあたっていますか。今後のビジョンと併せてお聞かせください。

大橋:〈みずほ〉は「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスを掲げています。ファミリービジネスの支援、特にコーポレートガバナンスの強化はセオリーも確立しておらず、お客さまとともに悩み、ともにあるべき姿を模索していくことになります。先述の支援事例では、お客さまから「苦労や失敗を含め、ここまで自分をさらけ出して話したのは初めてだ。家訓が完成したのは、大橋さんが事業やファミリーに関する話を引き出し、寄り添ってくれたからだ」というお言葉をいただきました。「ともに挑む。ともに実る。」アプローチがお客さまの喜びにつながったのです。今後もお客さまの視点に立ってともに考え、成長していければと思います。

広瀬:ファミリービジネスの支援は、創業家および企業のサステナブルな繁栄に資するもの。必然的に、お客さまと長期的に関わっていくことになります。時代も変化しますが、企業のメンバーやファミリーの価値観も変化していきます。時代に応じてさまざまなアプローチを考え、みずほグループのリソースとネットワークを駆使していきます。〈みずほ〉らしい支援を磨き上げ、今後もファミリービジネスに向き合っていきたいと考えています。

赤名:ファミリービジネス・マネジメントはファミリーと企業の双方について、整合性を持って支援していくフレームワークです。事業承継や相続では踏み込むことの少なかった「想いをどう残すか」というポイントが、コンサルティングの勘所になります。

資本市場では短期的な利益を優先するショートターミズムに目が行きがちな時世ですが、ファミリービジネスの経営における時間軸は10年どころか30年以上のタームになります。わが国は創業から100年を超える企業が多くあります。ファミリービジネスは長期の時間軸に立ち、真のサステナブル経営に取り組めるビジネスです。ただし、長期目線での経営が強みのファミリービジネスも、足もとの環境変化や税制などの変更にはタイムリーに対応していかなければなりません。変えてはいけないもの、そして時代に対応して果断に変えていくべきもの――このふたつを見極める「不易流行」の視点が大切です。時代の奔流の中、お客さまとともに挑みながら、不易流行のコンサルティングでファミリービジネスを支えていきます。

左から:広瀬・大橋・赤名

企業とともに挑み、ともに実る
前例のない支援で力を発揮するために

――ファミリービジネス・マネジメントのケーススタディを掘り下げてお聞きします。みなさんが尽力してきた支援事例をお聞かせください。

大橋:非上場企業の2代目オーナーのケースです。一族のメンバーが増えていく中で、創業者の価値観や想いをどう伝えていくかを悩まれていました。そこで、私たちは、ファミリーの土台となる価値観や理念、あるべき姿を示した「家訓」や、円滑な株式承継に向けた「株式承継ルール」の策定を支援しました。私はオーナーの生い立ちから経営、資産の受け継ぎ方にフォーカスし、合計で30時間以上のインタビューを重ねています。こうして、経営の中で悩んだり、迷ったりした際に「戻るべき拠りどころ」になる家訓を定めることができました。株式を承継するルール、つまり資産を承継する仕組みもつくり、アセットプランニングの面からもファミリーの永続的な発展に貢献できています。インタビューを通してオーナー個人の投資への考え方や、不動産の取得意向も伺うことができ、信託銀行としてさらなる支援も視野に入っています。

広瀬:創業から約 80年が経った企業のケースです。社長は創業者から数えて第三世代(孫)となり、親族のつながりや創業の理念が薄まることを懸念していました。親子の阿吽の呼吸で関係が維持できた前世代とは異なる、第3世代ならではの悩みです。ヒアリングを通して印象に残ったのは「これだけ企業を成長させてきた創業家の強み、理念とは何か。自分は受け継いでいる自信がなく、体現も継承も難しい」ということばです。私たちは、解決策として「家訓の制定」と「ファミリー会議の立ち上げ」を支援しました。次の世代に、ことばの重みと温度感を持って、しっかりと伝承していく。これがオーナーの想いに応える解決策になったのです。ファミリー会議は一族の一体感を確認し、ガバナンスを維持する仕組みとして定期的に開催。その運営やファシリテートを支援しています。

赤名:上場企業の事例です。経営の一線から退いたオーナーは株式を経営に関与しない家族へ承継するにあたって、自らの真意が伝えきれていないと感じていました。株式は持続的に配当収入を生み出し、企業の経営方針を左右する資産です。しかし、創業の想いを汲まない継承者がいた場合、無為に浪費されてしまったり、企業の成長戦略に沿わない議決権行使がされてしまったりする恐れもあるでしょう。そこで、オーナーや企業がどのような沿革を歩み、社会にどのような価値を生み出してきたのか、事業や株式に対してのスタンスなど、あらためて理念や価値観を取りまとめました。オーナーが事業や資産を形成す中では確固たる理念が築かれていますし、そこから導かれるビジョンは次世代の指針になるものです。ファミリーが株式に向き合う姿勢が明確になれば、企業の成長戦略にも、ファミリーの充実した人生にもポジティブな影響を与えるでしょう。コンサルティング部・企業戦略開発部が蓄積した事業承継のノウハウに加え、人脈や知的ノウハウといった非財務面もカバーした提案により、的確な支援ができました。

――ファミリービジネス・マネジメントの手厚い支援の一端が分かりました。携わるメンバーとして、どのような考えで業務にあたっていますか。今後のビジョンと併せてお聞かせください。

大橋:〈みずほ〉は「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスを掲げています。ファミリービジネスの支援、特にコーポレートガバナンスの強化はセオリーも確立しておらず、お客さまとともに悩み、ともにあるべき姿を模索していくことになります。先述の支援事例では、お客さまから「苦労や失敗を含め、ここまで自分をさらけ出して話したのは初めてだ。家訓が完成したのは、大橋さんが事業やファミリーに関する話を引き出し、寄り添ってくれたからだ」というお言葉をいただきました。「ともに挑む。ともに実る。」アプローチがお客さまの喜びにつながったのです。今後もお客さまの視点に立ってともに考え、成長していければと思います。

広瀬:ファミリービジネスの支援は、創業家および企業のサステナブルな繁栄に資するもの。必然的に、お客さまと長期的に関わっていくことになります。時代も変化しますが、企業のメンバーやファミリーの価値観も変化していきます。時代に応じてさまざまなアプローチを考え、みずほグループのリソースとネットワークを駆使していきます。〈みずほ〉らしい支援を磨き上げ、今後もファミリービジネスに向き合っていきたいと考えています。

赤名:ファミリービジネス・マネジメントはファミリーと企業の双方について、整合性を持って支援していくフレームワークです。事業承継や相続では踏み込むことの少なかった「想いをどう残すか」というポイントが、コンサルティングの勘所になります。

資本市場では短期的な利益を優先するショートターミズムに目が行きがちな時世ですが、ファミリービジネスの経営における時間軸は10年どころか30年以上のタームになります。わが国は創業から100年を超える企業が多くあります。ファミリービジネスは長期の時間軸に立ち、真のサステナブル経営に取り組めるビジネスです。ただし、長期目線での経営が強みのファミリービジネスも、足もとの環境変化や税制などの変更にはタイムリーに対応していかなければなりません。変えてはいけないもの、そして時代に対応して果断に変えていくべきもの――このふたつを見極める「不易流行」の視点が大切です。時代の奔流の中、お客さまとともに挑みながら、不易流行のコンサルティングでファミリービジネスを支えていきます。

(2024年01月29日)

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